がん治療 -結構大切、“家族歴”-

2007年7月

我々医師の記載するカルテの項目に“家族歴”という項目があります。興味があれば、病院にかかったときにカルテのフォームを見せて貰うと良いでしょう。

簡単に紹介すると、患者さんの訴えを記載する「主訴」、過去に罹患した病気について記載する「既往歴」、受診理由となった疾患の経過を記載する「現病歴」などです。その中で、「家族歴」という項目がありますが、ここには患者さんの兄弟、子供、親戚に高血圧、糖尿病、ガンといった疾患があるかといったことや、家族構成を記載するところです。私が、過去に指導した若い外科医師は1人残らず、家族歴の記載でガンの家族集積性があるか否かを一番問題にします(そういう私もそうでしたが・・)。

ガンは確かに遺伝性要素が見られる疾患ですが、それはガン全体の一部にあたり、本当に大切な情報はそれではありません。実は家族構成を中心とした社会的バックボーンを正確に把握することの方が遙かに重要です。

なぜなら、ガンは「老化病」としての側面も多々持つ病気ですから、今後日本社会が抱える「高齢化社会問題」の一部でもあるのです。ですから、治療を受ける患者さんが治療後にどういう形で社会の中に戻っていくのかを把握して治療をプランニングすることが重要になります。一人暮らしなのか、ご夫婦の2人暮らしなのか、子供はいるのか、いるとしたら子供と一緒に住んでいるのか、近所に住んでいるのか、遠方にいるのか、治療が進む中でご家族の方々にどのように、またどの方を窓口にしてサポートして頂けるのか、などを知ることが大切です。

がん治療のプランニングは単に治療法の選択だけでなく、患者さんの社会的背景まで入り込むことが要求されます。

「家族歴」の記載は時として、カルテの記載項目では軽んじられる傾向にあり、やもすると、看護師の記載する看護記録を参考にするだけの医師も少なくありません。ですから、私は、大学時代に指導した研修医全員に対して、「ガン治療におけるカルテ記載で一番大切なのは、家族歴だ。家族歴をおろそかにしてはいけない、丁寧に聞き出すように。」と言い続けてきました。 さて、その彼らにどの程度伝わっているのでしょうか?もう、忘れ去られたかな?