医療関係者の間ばかりでなく、一般の社会でも普通に聞かれるようになったインフォームド・コンセント(説明と同意)という言葉があります。インフォームド・コンセントとは「医者が患者に対して病状・治療法・手術法などについて十分に説明をした上で患者がその治療・手術を受けることに同意すること」をいいます。すばらしい理念をもった文章です。
ところが、ここで“十分な説明をした”という医師側のスタンスと“説明を十分に理解した”という患者側のスタンスは必ずしも一致しないことがあります。つまり、医師側が一方的に話し、患者サイドの理解の程度を十分に確かめずに治療の話が進んでいくということが起こりうるのです。
例えば、専門用語乱発医師の説明など、「胃の幽門側に腫瘍があって、3番と8番のリンパ節に転移が疑われて・・・」などとやってますから、何気なく、横で聞き耳を立てながら、「そんな専門用語や所属リンパ節の番号を言われても患者さんは頭の中、 “?”マークでいっぱいだろうな・・」などと思ったりします。
結局、説明と同意の“同意”の部分で、内容はよくわかんなかったけど、説明は終わったみたいだから、「はい」って“同意”しちゃった、ということが起こりうるのです。つまり、医師サイドからみると、「ちゃんと説明しましたよ。だから、あなたは『わかりました』って言ったんでしょ。」ということです。ある意味確信犯的な責任転換のようにも見えます。ですから、そのようにならないためには、医師サイドの提供している“情報”を十分活用する“力”が必要となり、患者さんサイドも“がん”についての勉強が大切になるのです。
インフォームド・コンセント(説明と同意)に似た言葉でインフォームド・チョイス(説明と選択)という言葉があります。インフォームド・チョイスの方が患者さん自ら治療法を選択するというニュアンスが強い言葉です。私は、がん治療におけるインフォームド・チョイスは、患者さんサイドが“がん”を理解し、分かり、医師の提供する情報を活用することができ、さらに自分の人生観・価値観・死生観を重ね、納得の上で治療を選択する過程でなされるものだと理解しています。
悔いのないがん治療を受けるためにはインフォームド・コンセントからインフォームド・チョイスに変えていくのが理想だと考えます。一方的な受身の医療ではなく、患者さん自身が治療の良否や損得を判断した上で、治療を選択するためには、患者さんサイドの“がん”を学ぶ姿勢がやはり重要と考えます。
