温熱療法 (2)

2007年7月

温熱療法が見た夢、その歴史

温熱療法は、身体を温めることで治療する治療法の総称で、古くから神経痛、リウマチなどの緩和・治療に使われてきました。温泉や遠赤外線、ホットパックなどです。がんに対する温熱療法をハイパーサーミアとも呼んでいます。ハイパーは高い、サーミアは熱です。本書では横文字は使わず、日本語の温熱療法で話を進めます。 “がん”が熱に弱いという性質を利用して何とか“がん”を制御できないかと過去にいろんな試みが行われています。

まず、偶発的な感染症により“がん”の制御が観察された事実から、人為的に発熱物質を人体に投与して“がん”をやっつけてやれという試みが過去に行われました。

1900年台にアメリカのWilliam B. Coley (1862-1936)医師がコーリー毒素という何種類かの死菌を混合した発熱物質を利用して“がん”を制御しようと試みています。実際に、コーリー毒素を使用した経験があるという医師に、手紙でコーリーのワクチン治療の実際の内容をお聞きしたところ、ワクチン投与により、発熱は起きるものの持続時間は短く、熱コントロールの確実性に問題があったとのお返事を頂きました。副作用に寒気や血圧低下が診られたそうですが、ほとんどの場合問題はなかったとも。

また、コーリー医師はより長時間に発熱を確保するために多量のワクチン投与を試みたこともあるようで、そのために患者さんが発熱治療に耐えられず、不幸な転帰を迎えたこともあったとのことです。

また、そのほか歴史的に全身温熱療法目的の発熱物質として、梅毒治療に使われた、硫黄療法(精製硫黄を0.5-1.0%の濃度にオレーフ油に溶解したものを大殿筋に注射する)、回帰熱スピロヘータ移植法、膨湖島リケッチア移植法、ゴノワクチンまたはチフスワクチン(混合ワクチン)の静脈内注射法といったものがあり、1920年代の日本の医学教科書にも記載されています。

但し、『これらの諸方にては発熱不確実、または発熱低くあるいは短く、且つ毎注射するの不便あり』(三宅鉱一:精神病學堤要 第5版;昭和29年、p154-5;南江堂、植松七九郎:精神醫學 第6版;昭和28年、p346-7;文光堂)とコメントされています。

このように、発熱物質を利用した全身温熱療法は、発熱の目標温度の維持、持続時間、制御といったことを自由に操ることが難しく、実用性に乏しいというのが現実のようです。

人為的な熱操作により、“がん”を制御しようとした他の試みとして、動脈から血液を取り出し加温してから体内に戻し全身加温する方法(体外循環による加温)が研究された時代もあったようですが、人体への負担・侵襲が強く行われなくなりました。“がん”を熱で叩いたけど、ヒトも死んじゃった、というところです。

また最近、とあるベンチャー企業の試みで、麻酔をかけながら全身を温水に長時間つかる全身温熱療法も、人体への負担・侵襲がやはり強く、がん治療への実用性からは、はるかにかけ離れたモノでした。

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