健康食品・サプリメントに関して

2007年7月

「 健康食品やサプリメントも治療に組みいれるのか?」 という質問に対する私見を述べます。

健康食品・サプリメントの類を医師の立場として治療戦略の中軸に据えたり、患者さんに強く勧めたり、強制的に購入させたりすることには大きな問題があるでしょう。 しかしながら、がん患者さんたちの4割以上はなんらかの代替療法を行っているというアメリカの調査結果もあります。そこには、何かに頼ってないと精神的に持たないという、“藁にもすがりたい”患者さんの心理があります。

ですから、その心情を考えると個人の裁量範囲内で代替療法も“あり”です。そして、患者さんは“医療消費者”であるという側面もある以上、健康食品・サプリメントにお金を使うかどうかは、ぶっちゃけ“患者さんの財布の中の問題”であって、本来主治医の関与するところではありません。

ただし、代替療法のために、あまりにも理屈に合わない多額のお金を使ったり、借金をしたりといったナンセンスなことにならないように導いてあげることは大切なことだと考えます。中には、何種類もの健康食品、サプリメントを同時に飲まれている方もおられ、それだけでかなりの費用(月額20 万〜30万円以上の患者さんもおられます)になります。

そういったとき、私はそれらにかかっているお金の一部を、保険外治療薬・未承認薬など科学的裏付けの少しでもある治療法に回してはどうかといったアドバイスをしたりしています。

健康食品・サプリメント使用上の留意点

患者さんから、

「○○というサプリメントはがんに効くでしょうか?」
「健康食品の△△でがんを治していきたいのですが・・」

といった相談をよく受けます。

多くの健康食品やサプリメントに共通しているのは、患者さん本人の「免疫力」あるいは「自然治癒力」を最大限に引き出してがんと闘うあるいはがんをやっつけるというコンセプトのモノが殆どであるということです。

確かに私も○○というキノコの類のサプリメントで肺癌の肺内転移が消失した方を経験していますし、△△という免疫系を賦活化するという“お茶”で緩和病棟から元気に戻ってきた方も知っています。

しかし、それらは確率論的に「奇跡」に分類されるモノです。奇跡とはいえ、○○や△△で病状が回復した患者さんが1人でも存在する以上、「○○でがんが治る」「△△ががんに効いた」という“日本語”は「ウソ」ではありません。「奇跡」は存在します。そして、患者さんが「奇跡」に頼りたくなる気持ちを理解できないわけではありません。

しかし、治療の中軸に「奇跡」に頼る治療を持ってきては、がん治療全体のバランスが崩れます。間違った治療です。「免疫力」や「自然治癒力」というのは、がん患者さんにはとても魅力的で甘美な「言葉」です。本当にがんがこれで治るような気がしてきます。特に、医師に見捨てられた“がん難民”となった患者さんにとって、それらの言葉は最後の拠り所です。

しかしながら、現実問題、免疫力、自然治癒だけではがんとは、まず闘えません。それらはがんと闘うための補助的な武器の1つというくらいの認識にしておくべきです。通常療法で十分な延命のチャンスがあるにもかかわらず、通常療法を無視して健康食品・サプリメント一辺倒で過ごすのは限りなく自殺に近い行為です。

がんという病気は知れば知るほど健康食品・サプリメントではまず歯が立たないということが判ります。それらの類は補助的に使用しながら、「奇跡」が舞い降りたらラッキーと捉えるぐらいの認識が大切です。

もっとも、効果の見られる確率がたとえ一万分の一、あるいはそれ以下という非常に低いものだとしても、宝くじと同じで買わないと当たらないというのも事実です。また、「何かにすがりたい。」という患者さんの心情を考えると頭から否定もできません。結論として、健康食品・サプリメントの類は、以下の5点に留意しながら利用してください。

  1. 免疫力・自然治癒力を謳う健康食品・サプリメントが治療の中軸になることはない。
  2. どの健康食品・サプリメントにも奇跡的に“効いた”ヒトはいる。宝くじに当たった他人をみて、自分もあやかろうと全てをそこにつぎ込まないように。
  3. それなりの値段がするものが多いため、お小遣いの範囲で行うこと。
  4. 科学的裏付けのある治療の妨げになると考えられる場合は、科学的裏付けのある治療を優先する。
  5. 何らかの効果があるということは、マイナスの効果が出ることも考えられる。使用に際し、体調に異常を感じたりした場合は、迷わず中止する。

・・・こんなところかな。