東京都中央区の内科・呼吸器科・がん治療

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連載「がんの休眠療法」最終回
高齢者と休眠療法(後編)
高齢者のがん治療は
“元気度”と相談

この記事は後編です。

右肺がんの術後、多発肺転移の80歳の女性の場合

高齢者のがん治療においては、ご自分の“元気度”と相談しながら、治療を組み立てることが大切です。歳を重ねてくると、がんだけでなく、他の持病を抱えていることも珍しくありません。ここでご紹介するのは、80歳の右肺がんの女性です。5年前に右肺がんを指摘され切除術を受けました。手術から1年後に多発肺転移が認められ、抗がん剤治療を開始しました。

それから、2年半にわたりシスプラチン+タキサン系、イレッサ、ナベルビン、UFT、ジェムザール、アムルビシン、TS-1……思えばいろいろ抗がん剤を使用してきました。熱心に治療を続けていただいた主治医の先生には感謝しきれないとのこと。しかし、そろそろ治療に疲れてきました。もともと膝が悪く杖歩行をされており、日常生活に介助が必要な患者さんでした。

ご自分で体力的な限界を感じてきたのでしょう。標準抗がん剤治療はそろそろ止めにしようと思いました。患者さんのこのようなカンは結構“アタリ”です。

この方の場合、治療の副作用で仮に寝込むことになったりしたら、あっという間に脚力が弱りADL(日常生活動作 Activities of Daily Living)が低下してしまう可能性があります。お年寄りの場合、“安静”のもとにベッドに1週間寝ているだけで、歩けなくなったり、認知症(ボケ)が進むことが多々あります。ですから高齢者では、多少熱があろうが、身体のどこそこが痛かろうが、安静ではなく身体を動かしたりリハビリテーションを行うことが他のどんな治療行為よりも優先することがあります。そろそろ抗がん剤治療を止めようと考えたのは、“虫の知らせ”かも知れません。

意外にこういうのは無視できず、非科学的と言われようが“ソレって結構大切かも”と感じることはよくあります。

この方が、休眠療法を希望して当院を来院されたのはその頃でした。来院にあたり、主治医の先生に「抗がん剤を減らした休眠療法に治療を切り替えたい」と相談されたとのことです。主治医の先生は、休眠療法が標準治療ではないことを知っていながらも、柔軟な対応のできる方で、
「当院では休眠療法を提供することはできませんが、あなたがやりたいと思う治療をおやりなさい。
でも、定期的にお顔だけは見せてください。あと、何かあったらいつでも相談にどうぞ……」
とのことでした。

休眠療法のような標準から外れた治療を患者さんがするとなると、2度とその患者さんを見ない!という医師も多いなかで、このような主治医はとても貴重です。特に、休眠療法を行ってくれる施設はほとんどないため、遠方から患者さんが当院に通院する際の距離の問題はとても重要です。

急に体調が悪くなったなどの場合、やはり家の近くの主治医の存在はとても頼りになり有難いものです。

休眠療法を始めて約1年 腫瘍の縮小に主治医はビックリ!

休眠療法を患者さんに提供するだけなら簡単です。しかし、休眠療法でいちばん苦慮しているところは、非標準治療であるが故に、他の医師や医療機関との医療連携が取りづらくなることです。

当院は入院設備がないため、当院の治療を理解していただける後方病院(入院受け入れ病院)を確保することにより外来通院で対応できない部分を補填していますが、非標準治療とガチンコに医療連携をとっていただける医療機関はそうあるものではありません。ですから、私の立場からはこのような柔軟な対応をしていただける主治医の存在はとても助かります。

私は、患者さんにはいろんな医療機関の“いい所取り”をして欲しいと思っているので、私自身も患者さんを私の所だけにつなぎ止めようとは考えません。治療の主役は患者さんですから、自由度・柔軟度はあってしかるべきと考えます。

話を戻します。まずは、TS-1 80mg/body隔日投与とタキソテール20mg/body/週から治療を開始しました。

TS-1は投与量を減らし、タキソテールも1回投与量は標準量の5分の1くらいです。ともに以前、使用経験のある薬剤ですが、抗がん剤を休眠量(低用量)にしたらまた反応するということはときどき経験します。ですから、以前は標準量で効かなくなった薬剤でも、もう1度休眠量でトライしてみる価値はあります。この方も治療開始後、急に腫瘍マーカーが下がりました。ケホケホと変な咳をしていましたが、咳も治まり落ち着きました。副作用はありません。

主治医の先生は、
「あれ?腫瘍マーカーが下がっていますね、こんなコトもあるのですね」
と言われたのこと。

私に言わせれば、特に珍しいことではありません。休眠療法では頻繁にあることです。

当初は、毎週抗がん剤を投与する予定でしたが、遠方より来院されているということと、前述したように、脚が不自由で通院が大変でしたので抗がん剤の投与は結局2週間に1回くらいの割合になりました。股関節痛のリハビリ治療のため、しばらく通院できなかったこともありました。しかし、日常生活は今までと同じように元気に暮らしておられました。

80際、女性、右肺がん術後・多発肺転移

さて、休眠療法を始めて約1年が経ちました。たまには、病態を確認しておきましょうと胸部CTを撮影することになりました。

そこで、病巣の増大を予想していた主治医はビックリ。

「あれ?小さくなっている!
あり得ない!」

外来診察室に、主治医以外の若い医師たちも集まってきて、
「ナンカ他に治療してんじゃないの?」
「へぇー‥‥‥」
「ホントに?」
とワイワイガヤガヤ、チョットした人だかりができたとか(写真を参照)

「皆さん、豆鉄砲を食らったような顔をしてましたよ」
と患者さん。

ちなみに、とあるがん専門病院でのお話です。

主治医は、
「ご自分のやりたい治療をどうぞ」
とは言ったものの、休眠療法なんぞ効くはずのない空(カラ)抗がん剤治療を1年も行っていたわけだから、当然、病状は進行しているハズだと考えていたのでしょう。

その患者さんは、相変わらず元気です。

まとめ

さて、3回にわたり高齢者と休眠療法というタイトルで話をさせていただきました。抗がん剤を個人の体力、体質に合わせて投与する休眠療法は幅広くさまざまな状態の患者さんに提供することが可能です。本法は治療がないと言われた、“高齢者がん難民”の患者さんにとっても大きな福音になるはずです。
「良い時間をいちばん長く」のための選択肢としてご利用ください。

月刊誌「統合医療でがんに克つ 2009.8 vol.14」より

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