銀座並木通りクリニックの三好立医師に聞く
標準治療と緩和ケアの間の隙間を埋める治療が大切

手術や抗がん剤など標準治療ができなくなった“治らない”がん患者は、医師からいずれ、「もう治療法はありません。あとは緩和ケアです」と告げられます。緩和ケアでは、痛みなどの症状を和らげたりしながら静かに人生の幕引きを待つことになります。
私自身、かつての大病院勤務時代は、多くの患者にそう告げてきました。でも、あきらめたくない、もっと生きたいと望む患者は大勢います。ただ、治療方法がない……。そうした標準治療と緩和ケアの隙間で途方に暮れ、さまよう患者こそが「がん難民」です。
この隙間では「治療法がない」が前提のため、がん拠点病院などに治療を求めても、解決策はほとんど出てきません。すると多くの患者は、怪しげな代替治療や民間療法にはまっていくのです。
がん難民の治療をどうするのか、ということは現在のがん診療に突き付けられた大きな課題です。「難民」と形容される厳しい状況の中で、方法論を模索・追求し、患者ががんと共存しながら少しでも長く元気に生きることを目指す。それが、がん診療に関わる医師の役目と考えています。私ががん専門クリニックを開業したのはそのためです。
それでも、“治らない”がん患者には必ず終末期という看取りに向かう時期が訪れます。がん難民の状況下では、元の治療医とのつながりが切れ主治医不在のことが少なくありません。終末期に至る前に、地元病院や在宅医の確保など、自身の診療環境をしっかりと整えておくことが重要。それで初めて、がん難民をなくすことができるのです。
「AERA」2015年9月7日号 大特集「がんを恐れない」より
承諾書番号(A15-1170)