連載「がんの休眠療法」第8回 腫瘍マーカーと休眠療法(前編)|東京都中央区銀座並木通りクリニックは内科・外科・呼吸器科の一般診療とがんの外来治療(腫瘍内科・緩和ケア内科)中心のクリニックです

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連載「がんの休眠療法」第8回
腫瘍マーカーと休眠療法(前編)

「腫瘍マーカーって何ですか?」
「高いと悪いのですか?」
患者さんからよくある質問です。

患者さんに病態の説明をするにあたり、われわれ医師が当たり前と思って使用している単語が本当は特殊なものだと実感することはよくあります。
「患者さんにわかりやすい説明をするように」
と新人のころ先輩医師に指導を受けましたが、いまだに時に苦労します。

さて、「腫瘍マーカーってナニ?」
という患者さんの問いに対して、以下のように箇条書きにしてみました。

  1. がんのつくる特殊な物質のこと。
  2. その特殊な物質は血液中に流れ出すため血液検査で検出できる。
  3. がんが増えると血液中に流れ出すその特殊な物質も増えてくるので、体内のがんのある・なし、がんの多い・少ないを知るための「マーカー(しるし)」として使える。だから“腫瘍マーカー”という。
  4. 特種な物質(腫瘍マーカー)にはいろんな種類がある。
    自分の腫瘍マーカーの名称は主治医に聞いて知っておくこと。
  5. がん細胞がどの種類の特殊物質をどのくらいの量をつくるかは個人差がある。まったくつくらないヒトもいる。それは、それぞれの患者さんのがん細胞の個性。だから個人の腫瘍マーカーの値を他人の値と比べてはいけない。つまり、私の腫瘍マーカーはお隣のヒトよりも高いけど自分のがんは悪いのかしら、などと考えてはいけない。
    ヒトはヒト、自分は自分。

この連載は、患者さんが気楽に読めたらいいなと思って続けていますので、細かいことや学問的な言い回しは抜きです。ですから、だいたいこのような認識でよいと思います。腫瘍マーカーはがん細胞の産生するタンパクの一種で、云々……なんてゴチャゴチャ言い始めるとそれだけで混乱します。

さて、当院で休眠療法を行う際にも、この腫瘍マーカーの推移を重要視しますが、他の画像診断などとともに全体を診ます。腫瘍マーカーの動きだけで治療経過を必ずしも診ることのできない理由は、がん細胞の多様性という少しややこしい話に踏み込む必要が出てくるので今回は省きます。ここでは、腫瘍マーカーのみに焦点を当てて見ていきます。まずは、がん細胞の増殖の仕方について――。

がん細胞はネズミ算で増えていく

腫瘍マーカーについて話を進める前に、がん細胞の増え方について見てみます。
簡単な腫瘍学のお話です。

がん細胞の特徴の1つとして制御を超えて永遠に分裂増殖するというのが挙げられます。たとえば1951年に亡くなられた、とある黒人女性の子宮頸がん組織に由来する「がん細胞」は、実験室で爆発的に増殖し、世界中で医学研究に使用されています。そして現在、その細胞量は、もとの黒人女性の体重の400倍以上になっているとか。

さて、そのがん細胞の増え方ですが図のようになります。身体の中に生じた1個のがん細胞が分裂して2個になり、その後もそれぞれのがん細胞が分裂を繰り返し2個が4個、4個が8個、8個が16個、16個が32個、32個が64個……とねずみ算式に増えていきます(図1)。

そして、約30回分裂したところでがん細胞は10億個になり、1cm・1gの“がん”として臨床的

に認識されるようになります。2のn乗ですから、ご自分で計算してみてください。どんどん桁が増えて目が回ります。もっとも、これは身体の中でがん細胞が規則正しくネズミ算式に分裂している、また増殖しているがん細胞のすべてが生き残っていることを前提としたものですが、実際の臨床のなかでよく当てはまり、実感できるモノです。

がん細胞の増殖と腫瘍マーカーの関係

さて、がん細胞はねずみ算式に増殖することを押さえたところで、次にがん細胞の増殖と腫瘍マーカー値の関係を見てみます。

今、1個のがん細胞がある腫瘍マーカーを1つつくり、それが血液中に流れ込むとします。この血液中に流れ込んだ腫瘍マーカーを血液検査で検出します。そうすると、がん細胞が分裂して2個になると血液中の腫瘍マーカーは2つになります。さらに分裂して4個になると4つです(図2)。

その後も8、16、32、64個……と増えていきます。つまり、がん細胞がねずみ算式に増えるにつれ、血液中の腫瘍マーカーもねずみ算式に増加します。ここで横軸を時間、縦軸を腫瘍マーカー値にしてグラフを描くと図のように突き上げるような放物線を描きます(図3)。
ネズミ算式増殖=放物線デス。

腫瘍マーカー値が放物線状に増えているとき、身体の中でがん細胞ががん細胞らしく順調(?)に増殖していることが推測されます。

つまり、がんの増殖になんら制御が働いていないということです。それは、そのままだと最短時間で死が訪れることを意味します。

また、なんらかの治療を行っていながら放物線状に腫瘍マーカー値が上昇しているのなら、その治療はがんの増殖にまったくブレーキとして働いていないと判断できます。

治療が延命に寄与していないということで、その治療のそのままの継続は無駄な行為です。こう見てくると、腫瘍マーカーを治療の指標として使用する場合、この放物線のカタチをいかに崩すか、崩せるか……が治療に求められていることになります。

次回(「腫瘍マーカーと休眠療法(中編)」)は、休眠療法の実践のなかで、腫瘍マーカーの推移をどのように考えながら治療を進めているのかを見ていきたいと思います。

月刊誌「統合医療でがんに克つ 2009.2vol.8」より

月刊誌「統合医療でがんに克つ」連載 がんの休眠療法

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